使っているフレームワークの保守が終わった、という連絡が現場から上がってくる。調べると、たしかに開発元はもう新しい修正を出していない。ただ、システム自体は今日も問題なく動いていて、業務は止まっていない。作り直すとなれば、それなりの金額と期間がかかる。どう決めればいいのか。
最初にお伝えしておくと、動かさないという判断は十分に成り立ちます。保守が終わった基盤を、そのまま数年使い続ける会社はいくらでもあります。問題は、動かさないことを決めたのか、決めないまま時間が過ぎているのかの違いです。この2つは外から見ると同じ状態に見えますが、数年後に起きることがまったく違います。
塩漬けは放置ではない
意図して動かさない場合、やることがいくつかあります。外に公開する範囲を絞る、通信の経路を限定する、動かしている環境のバックアップを取れる状態にしておく、いま動いているものを再現して立ち上げ直せることを一度確かめておく。
最後の一つが抜けがちです。何年も触っていないシステムは、サーバーが壊れたときに同じものを建て直せないことがあります。当時の手順を知っている人がいない、入手できなくなった部品が混ざっている、設定が誰かの手作業で入っている。動かさないと決めたなら、建て直せるかどうかは先に確かめておきます。ここが確かめられていない塩漬けは、判断ではなく運任せです。
確かめる作業自体は、作り直しに比べればはるかに小さく済みます。数日から数週間の話です。
期限は技術の外から来る
「保守が終わった」という事実だけでは、いつまでに動かすべきかは決まりません。期限を作るのは、たいていシステムの外側にある事情です。
取引先や決済会社から、接続方式を変えるので何月までに対応してほしいと通知が来る。使っているクラウドやサーバーの契約が終わり、次の世代に移らざるを得なくなる。法令や制度が変わって、帳票や税率の扱いを直す必要が出る。監査や取引先の審査で、保守の切れた基盤について説明を求められる。そして、そのシステムを触れる人が退職する。
この5つのうち、日付が決まっているものが1つでもあれば、それが期限です。技術側の「そろそろ危ない」という言葉には日付がありませんが、こちらには日付があります。
現場に聞くこと
判断の材料を集めるために、技術の中身に踏み込まずに聞けることがあります。
いま同じものをもう一度立ち上げられますか。手順は残っていますか、それとも誰かの記憶ですか。外部とつながっている先はいくつあって、そのうち相手の都合で変更を求められる可能性があるのはどれですか。このシステムを一人で直せる人は何人いますか。その人が来月いなくなったら、次に触れるのは誰ですか。
答えに数字が出てくるかどうかを見ます。外部連携は12か所、うち3か所は先方が古い方式を段階的にやめると言っている、触れるのは一人。ここまで出てくれば判断できます。「大丈夫です」「まだ動きます」しか返ってこないときは、調べていないか、調べる余裕がないかのどちらかです。
決めるべきは着手日ではなく再判断の日
いま動かさないと決めたとして、その決定をいつ見直すかを同時に決めます。ここを決めないから、気づくと三年経っています。
見直す日は、カレンダーの日付で置きます。半年後の特定の月、あるいは予算を組む時期に合わせる。そして、その日より前でも見直す条件を1行だけ書いておきます。外部連携の相手から変更の通知が来たとき。触れる人が一人になったとき。障害が起きて復旧に半日以上かかったとき。
条件に触れたら、その時点で作り直すかどうかを改めて考える。日付と条件が紙に残っていれば、判断を先送りしても管理されている状態になります。
いま決めなくていいこと
この段階で、どの技術で作り直すか、どの会社に頼むか、総額はいくらかを決める必要はありません。動かさないと決めたなら、これらは見直しの日まで考えなくて構いません。先に決めても、そのときの条件は変わっています。
一つだけ、動かすと決まったときに時間がかかるものがあります。いま動いているシステムが何をしているかを調べる作業です。仕様書が無い場合、ここに数週間から数か月かかることがあります。期限が先に来ると分かっている場合、調査だけを先に始めておくと、あとの選択肢が広がります。調査の結果は、どの会社に頼むかを決めるときにも使えます。
判断がつかないとき
材料を集めても決められないことはあります。動かすほどの理由も無いが、このままでいいとも言い切れない。
そのときは、決められないという状態のまま、見直しの日だけを決めてしまう方法があります。判断を保留にすること自体は問題ではありません。保留にしたことを誰も覚えていない状態が問題です。担当者が変わっても引き継がれる場所に、現状と、見直す日と、見直す条件を書いておく。それだけで、次に困るときの入り口が用意されます。
私たちが相談を受けるのも、多くはこの段階です。作り直すかどうかを決める前に、いま何が動いていて、どこに期限があるのかを一緒に整理するところから始めます。